【翻訳】Final Statue Fantasy: part 1 #1

■■ 幕間 ■■

時空の狭間に浮かぶ荘厳な居城。玉座に腰掛けた城の主——魔王アザラは退屈していた。目の前には、最高位の従者であるサキュバス、ムラサキが跪いている。従者が用意した巨大な水晶玉にはとある光景が映し出されている。ムラサキが口を開く。

「ご主人様、水晶玉をご覧ください。今宵わたくしは最高のショーをご用意致しました。異世界から招かれた10組の美闘士達。彼女たちは数多の試練に立ち向かい、怪物をも退けるでしょう。しかし最後には、ご主人様の所有物となることが運命づけられております」

「ふぅん、そう。たしかに愉しそうね。でもそのたぐいの余興なら、私が毎晩眺めていることを知っているでしょう?」

城の主は、気怠げに部屋の中を見渡す。玉座を囲むように、様々に美しい戦士達の石像——魔城に挑み、敗北し、罠に捕らわれた女性達が、佇んでいる。神々に比類する強大なる魔王アザラは、過去千年もの間、遍く次元から美しい女性達を連れ去り、悠久の美を与えることが至上の楽しみだった。

「ふふ、もちろん存じ上げております。しかしご期待ください。今宵の宴はわたくしと眷属達が入念に準備したものです。彼女たちには、ご主人様の予想を超えるほどの素敵な結末が待ち受けております」

「ふーん。石に変わっていく女達を見ることに飽きたことはないけど、新鮮なサプライズがほしかったの。ムラサキ、いい趣向ね。楽しめそうだわ」

「もちろんです、ご主人様。それでは始めましょう。水晶玉にご注目ください」

■■ 広間 ■■

「なんだか不気味ね…」純白のドレスに身を包んだ白魔道士——バロン国王女、ローザは物憂げに辺りを見回す。彼女には10代の息子がいるが、その美貌にはいささかの衰えもみられない。

「気をつけて。この部屋、悪い魔法がかかっているみたい」緑髪の召喚士、リディアは周囲の様子をうかがいながら、仲間に向けて忠告する。彼女が過ごした召喚士の里は時の流れが常とは異なっていたため、その姿にはいまだ幼さが残っている。

「慎重に進みましょう。わたくし達、どうやってここに来たかも覚えていないのですから…」ポロム—かつて少女だった白魔道士は、いまや美しい女性へと成長していた。ポニーテールに結われた桃色の髪が、彼女が着ている同色の魔術衣に映えている。

「みんな注意しなさい。この彫刻、もしかして…」この部屋は広間のようだ。通路の両脇にはいくつもの大理石像が台座に飾られている。いずれも艶やかな女性の裸婦像だった。恐怖、不屈、驚愕。様々な表情がその顔に刻まれている。まるで今にも動き出しそうだ。

二人の白魔道士は互いに目配せし、解呪の魔法を唱えた。……何も起こらない。白魔道士達は胸をほっとなで下ろした。しかし——かつてポロムがそうだったように、エスナが必ずしも全ての石像化に対して有効ではないことを、彼女たちは知っていた。

「先に進もう。この石像が元は人間でも、いまのあたし達じゃ助けられないよ」リディアが仲間達を促す。奥にはこの部屋の出口が見えている。ポロムがリディアの後ろに続く。ローザは弓を構え、側面に注意を向けながら着いてくる。

扉は目の前だ。リディアが出口に近づいたその瞬間、突如、鋭い悲鳴が上がった。リディアは振り返る。石像の一体が突然動きだし、ローザの肩に組み付いた。王女は逃げようと激しく身をよじるが、石像の力は強くがっちりと彼女を掴んで離さない。

ローザを抱えたたまま、動く石像はあっという間に、空の台座の上に移動していた。ローザは自身が辿る運命を感じ取りながらも、恐怖に屈しなかった。弓を携える彼女の瞳には強い意志が浮かんでいる。彼女はバロン国王女——例え石化してもそれは変わらない。

白色のうねりが王女の身体を侵食していく。それは腕を這い、首筋へ、そして美しい相貌へと広がっていく。彼女の表情はいまだ勇敢なままだった。最後にブロンドの長髪を白く染めあげ、ローザは完全に石化した。硬化したドレスはボロボロと崩れ落ち、艶めかしい裸体が露わになる。

「う、嘘…エスナが効きませんわ!」「ローザ…ごめんね、助けられなかった…」ローザの石化…解呪魔法すら効かない戦慄の出来事に、残された二人ははひどく取り乱していた。王女を襲った石像は役目を終えたのか、自分の台座に戻るとポーズを取り動きを止めた。

部屋は静寂に包まれた。ローザを含め、石像達はいずれも微動だにしない。ポロムは——この部屋の犠牲者同様、かつて石化し、広大な城に取り残された自身の姿を思い出す。彼女の背筋をゾクリと悪寒が走る。

「行こう。きっとこの城のどこかに、石化を解く方法があるはずだよ…!」悲しみにくれる仲間の肩に、リディアはそっと手を触れた。白魔道士はいくらか平静を取り戻したようだ。リディアに顔を向けたその瞬間、ポロムの脳裏は不可解な感情に支配された。

「ああ…リディア。わたくし、すごく怖いわ…」ポロムはもう一人の少女に向き直ると、その胸に抱きつき、膨らみに顔を埋める。「心配しないで…約束するよ。あたしが守るから、今度こそ…」この時リディアもまた、説明のつかない感情に襲われていた。

リディアは、寄り添う少女の頬に優しく手を添えると、わき上がる衝動に従い、ゆっくりと顔を近づける。彼女はポロムの額に柔らかな唇を寄せた。「お願い…一緒にいて…」少女達は互いの手を取り歩き始める。大理石の裸婦像と化したローザを一人残して。

■■ 幕間 ■■

「あの娘たち急に仲良くなっちゃって…。お前の仕業ね、ムラサキ?」魔王アザラは気怠げ、従者にを視線を向ける。思いがけず始まった展開に、城の主は少々不満のようだ。

「はい、余興でございます。あの二人はわたくしの魔法、”ラブミスト”の術中に囚われました。いま彼女たちは情欲の虜となっていることでしょう」サキュバスの矜持を込めて、ムラサキが説明する。しかしアザラの返事はそっけなかった。「その趣向、本当に必要なの?」

「何をおっしゃるのです、ご主人様!ロマンスこそ宴を盛り上げる最高のエッセンスではございませんか!美少女が美少女を愛する、そんな石像をあなた様が熱心に集めていることを、わたくしはもちろん存じ上げております!」興奮気味にムラサキが答える。

サキュバスは大げさにかぶりを振ると、部屋のとある一角を指差した。その場所には、同性愛の快楽をその身に塗り込まれた、いくつもの女性像が飾られている。従者の激しい主張に、主は呆れ気味に口を開く。「あーわかったわ。お前はくわしいわね…」

「さっきの二人がどんな最後を迎えるか、興味はある。それに残りの勇者たちの結末もね。好きなようにするといい、最後まで付き合うわ」魔王は寛大に言い放つ。「お任せください。ふふ。それでは次のゲームをご覧ください」サキュバスは水晶玉に手をかざす。その表面に波紋が広がっていき…。

つづく Final Statue Fantasy: part 1 #2

« »