M9さん作 : 侍魂外伝 ~姉妹の絆~ (1)

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その姉妹がその村に辿り着いたのは、太陽が西に傾き始めた頃であった。
彼女たちは自然を護る為、自然を脅かす悪しき物達を倒す為の旅を続けていた。
ナコルル「ふぅ、ここからは山越えになるわね・・・。
     今からだと夜になってしまうかもしれないし、どこか泊まれる所を探した方が良いのかもしれないわね。」
リムルル「そうだね・・・でも、泊まれる所なんてあるのかなぁ?」
周りを見回しても木々が立ち並ぶばかり。
林道を外れれば迷ってしまう・・・そんな雰囲気だ。
とは言え、自然の声に耳を傾ける事の出来るナコルルが森で迷う事などほとんどありえない事なのだが。
リムルル「あ、ナコルル姉様っ!こっち、道があるよーっ!」
いつの間にやら進んでいたのか、妹のリムルルが先の方で手招きをしている。
ぶんぶん手を振って・・・朝から休まず歩き続けていると言うのに、まだまだ元気が有り余っている様だ。
ナコルルはそんな妹の仕草にクスリと微笑むと、妹の待つ方へと駆けていった。
妹の元に辿り着くと、そこには確かに道が分かれていた。
正面の道が山へ向かう方、左は脇道にそれる感じ。
そしてその先には村がある様だ。
ナコルル「そうね・・・じゃあ今晩はあそこで休む事にしましょうか。」
リムルル「うん、行こっ姉様!」
こうして村へと向かって歩き出す彼女達。
少し歩くとすぐ村の入口に辿り着く。
そこで彼女たちは予想外の歓迎?を受けた。
村に入ってきた彼女たちを見るやいなや村人数人が駆け寄ってきたのだ。
村人B「お、みんなー!奴ら帰ってきたぞ!!」
村人A「おお、無事に帰ってきおったか・・・って、何じゃ、お前ら」
リムルル「む、何だよって・・・失礼だなぁ。」
ナコルル「まぁまぁ・・・所で、何かあったんですか?」
村人達の何かただならぬ雰囲気に疑問を感じたナコルルはそう問いかけた。
村人C「・・・見たところ旅の方の様だな、これは村の問題じゃ。巻き込む訳にはいかん。
    あんたらも命が惜しかったらさっさと村を出ていきなされ。」
ナコルル「そんな・・・今からだと山越えをしなくてはなりません。
     どうか一泊だけでも宿をお借り出来ませんか?何か手伝える事があるならお手伝いしますから・・・。」
村人A「そう言われてもな・・・うん?」
ふと村人が彼女たちの腰の方に目をやる。
彼女たちの腰には短刀とおぼしき物があった。
村人A「あんたら・・・武芸のたしなみでもあるのかね?その腰の物は飾りじゃ無いようだが。」
リムルル「そうだよ、ナコルル姉様は強いんだから。そんじょそこらの山賊や怪物なんて目じゃないんだから。」
そう言って自慢げに薄い胸を張るリムルル。
一方それを聞いた村人達は「怪物」と言う単語に反応し、驚いた様な表情で顔を見合わせた。
ナコルル「何か・・・あったんですか?」
再び問いかけるナコルル。
ややあって村人は重い口を開いた。
最近、村の近隣の森に妙なモンスターが出没するという事。
何人かの村人や雇われ浪人達が退治に向かったが、誰も帰ってこないと言う事。
心配になって探しに行った者が見たのは、立ち並ぶ石像群・・・。
村人B「皆、石にされてしまったんじゃよ。今日も何人か向かったが、そいつらも未だ帰ってはこぬ。」
ナコルル「それで私達を見て駆け寄って来たんですね・・・。」
村人C「そうだ、判ったら出て行け・・・と言うのも酷な話か。
   一晩だけなら宿を用意してやる、夜が明けたらさっさと出ていきなさい。」
そう言って方々に散っていく村人達。
ナコルルはしばし考えると・・・口を開いた。
ナコルル「あの・・・私にその怪物退治、任せてもらえませんか?」
村人A「・・・お主、何を言っているのか判っておるのか?
    相手は怪物じゃぞ?お主の様な年端もいかない小娘に何が出来ると言うのだ。」
リムルル「バカにしないでよっ!これでも私達、戦士なんだから。怪物なんて今まで何匹もやっつけてるんだから。」
ナコルル「この子の言う通りです、私達は大自然を護る為、悪しきモノを討つ旅を続けています。
     これも何かの縁・・・お困りでしたら何かお手伝いがしたいのです。」
村人A「しかし・・・うーむ。。。」
村人達は少しの間話し合うと、すまなさそうな顔をしてこう言った。
村人A「では・・・頼めるかの?君達のような娘さんに頼むのも気が引けるが・・・背に腹は代えられぬのでな。
   その替わり、わしらに出来る最高のもてなしをさせて貰う。」
ナコルル「はい、判りました。」
リムルル「よぉ~っし、私達に任せてよっ!」
そう言って張り切るリムルルであったが、ナコルルは何やら真剣な表情で口を開いた。
ナコルル「ダメよ、リムルル。あなたは村に残りなさい。」
その意外な言葉に、一瞬戸惑った様な表情になるリムルル。
リムルル「え?・・・どうして?今までだって一緒に・・・。」
ナコルル「今度の敵は未知数よ。それに森に漂っていた気配・・・感じなかったの?」
リムルル「それは・・・でも!1人じゃ危険だよ!」
ナコルル「大丈夫よ、リムルル。それにもし覇王丸さんがこの村に立ち寄った時、誰もいなかったら困るじゃない。
     貴女にはここで連絡係をお願いしたいの。」
確かに姉の言う事も一理ある。
覇王丸と言うのは旅で知り合った仲間みたいな人。
目的が同じと言う事もあって行動を共にしているのである。
今は故あって別行動をしているが・・・明日、山越え先の村で合流する手はずだ。
とは言え、近隣に村も無い上に、今まで通ってきた林道は一本道。
宿を取る為にこの村に立ち寄る事もあるかもしれない。
もしそうなれば早く合流する事も出来るだろう。
リムルル「でも・・・。」
村人B「そうじゃ、姉さんの言う通りじゃ、君の様な子供が・・」
リムルル「子供扱いしないでよっ!」
遮る様に声を上げるリムルル。
ナコルルはやれやれといった表情をしたが、すぐに真面目な表情になる。
本当は連絡係なんて建前。
妹を危険な戦いに巻き込みたくない・・・それが姉としての本音だった。
ナコルル「・・・リムルル、お願いね。」
もう一度リムルル諭すように語るナコルル。
・・・そう言い残し、ナコルルは元来た林道の方へと歩いていった。
村人達もそれを見送ると、それぞれに帰っていく。
広場に残されたのはリムルル1人。
リムルル「いつも子供扱いして・・・。」
ぶつぶつと文句を言っていたが、ややあってそうだ!と手を鳴らした。
リムルル「そうだ!私だってやれるって事判らせれば・・・私の事一人前って認めてくれるよね。」
そうと決めれば善は急げだ。
リムルルは持っていた2人分の荷物を近くの納屋に放り込むと、う~んと準備運動の様に伸びをした。
リムルル「ここ、お借りしますね~っ。」
そう言い残すと、彼女もまた村を後にした。
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