M9さん作 : 侍魂外伝 ~姉妹の絆~ (3)

3
ナコルル「リムルル!?」
姉は確かに妹の声を聞いた様な気がした。
茂みを掻き分け、声の方へ走る。
ややあって、少し開けた場所に出る。
そこには・・・泥で出来た巨人と横たわる見覚えのある姿。
ナコルル「リムルル!!!」
巨人には目もくれず、側へ駆け寄る。
それは完全に石となって横たわるリムルルの姿であった。
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ゴーレム「なかなか良い物であろう?」
ナコルル「・・・ッ!」
ゴーレムはナコルルを見下ろしてそう呟いた。
その言葉に厳しい表情を返すナコルル。
ナコルル「許せない・・・すぐに妹を元に戻しなさい!!」
ゴーレム「妹?そうか、君がこの娘の・・・。石化を解くには私を倒すしかない。石化を解きたければ・・・私を倒す事だ。」
ナコルル「・・・なら、私は貴方を倒す事を躊躇いはしません。自然に還りなさい!!」
いつになく強い口調で宣戦を布告するナコルル。
彼女は本当は争いを嫌っていた。
出来れば避けたい・・・とも思っていた。
しかし・・・妹の為には・・・この戦いは避けられない。
その気持ちが彼女を修羅の道に駆り立てた。
全ては妹の為に・・・。
ゴーレム「簡単にはやらせんよ!君にも石になって貰おうか!!」
踏み込みざまに右パンチを放つゴーレム。
それを紙一重で避けつつ、懐に飛び込み、厚い胸板に短剣を突き刺す。
しかし、伝わってきたのはぐにゃりとした柔らかい手応え。
ナコルルの表情が驚きに染まる・・・が、すぐに短刀を引き抜き、再び間合いを離す。
ナコルルが離脱すると同時に左腕の重い一撃がナコルルのいた場所に突き刺さった。
ゴーレム「ムダだ、私に刀剣の類は通用せぬ。」
ナコルル「・・・っ!」
確かにこの怪物の言う通りだ。
今の手応えでは刀でダメージを与える事など無理だろう。
ナコルル(どうすれば・・・。)
じりじりと間合いを開ける。
一方の怪物は余裕な態度でこっちを見つめている。
考えを巡らせながら、チラリと妹の方を見る。
石像となって横たわるリムルルの姿。
ナコルル(負けられない・・・何か方法が・・・え?)
ふと妹の側に落ちている物に目が止まる。
妹が使っていた短刀だ。
ぱっと見普通の短刀だが・・・まだ僅かに氷の力が宿っている様だ。
リムルルが力を宿して戦っていたのだろうか?
使用者が石化してもまだ残るその力。
リムルル(・・・姉様、私も一緒に戦うよ・・・。)
ナコルルにはそんな声が聞こえた様な気がした。
敵の様子を伺いつつ駆け寄ってそれを拾う。
これなら・・・やれるかもしれない。
確信はない、でも・・・ナコルルは妹の力に賭けて見る事にした。
ナコルル「リムルル・・・力を・・貸して・・・。」
短刀を握りしめ、祈りを込める様な仕草をするナコルル。
ゴーレム「祈りは済んだかね?では・・・君も石となれ!!」
手を広げ、泥の散弾を放つゴーレム。
ナコルル「ママハハっ!!」
鷹のママハハを呼びつつ自分も飛び上がり、ママハハに自分の腕を掴ませる。
鷹は一気に上昇し、散弾の雨からナコルルを引き上げる。
ナコルルくらいの重さならある程度の高さまで引き上げる事が出来るのだ。
ゴーレム「・・・!!」
それは広範囲に渡る散弾。
回避されるとは思っていなかったのか、巨人の表情に驚きの色が見てとれる。
咄嗟に散弾を止め、腕を上空のナコルルへと向ける。
巨大な肉体のせいかやや緩慢な動作。
腕を向けられるより早く、ナコルルは行動を起こした。
ナコルル「カムイ・・・ムツベ!!」
ママハハから分離し、空中から急滑降しつつ斬撃を加えるナコルルの必殺技。
高速で迫るその一撃を防げず、ゴーレムの胸には袈裟懸けに斬撃の痕が残る。
しかし、それでも尚余裕の態度を取るゴーレム。
ゴーレム「無駄だと言ったはずだ。」
泥で出来た体に斬撃を加える。
傷は残っても、ならせば消えてしまう。
幾多の武芸者が傷1つ負わせる事さえ出来なかったこの体。
・・・しかし。
ゴーレム「・・・なんだ!?コレは・・・!!」
傷口が氷結している。
その氷結は全身を覆い尽くそうとするが如く、急速にゴーレムの体を凍結させていく。
ゴーレム「バカな!?この私がッ!!!」
頭部を残し、完全に氷の巨人と化したゴーレム。
頭部が凍結するのも時間の問題だ。
ゴーレム「バカナァァァッッッ!!!!!」
頭部が凍り付くと同時に、傷口を堺に真っ二つに折れる巨人。
折れた上半身はそのまま地面に激突し、粉々に砕け散った。
下半身もまたバランスを崩し倒れた。
魔力の支えが切れたのか、それらは溶ける様に消えていく・・・。
ナコルル「大自然の・・・お仕置きです。」
ふぅ、と安堵の表情を浮かべるナコルル。
これで皆の石化も解けるだろう。
ナコルルはゆっくりと妹の側へと向かう。
足下には未だ石化の力に囚われたままのリムルルの姿。
ナコルル「リムルル・・・すぐ元に戻してあげるからね・・・。」
・・・その時だった。
ナコルルの背後に泥の壁が建ったのは。
ナコルル「え!?・・・きゃあっ!」
咄嗟の事に何が起きたか理解できず、壁に腕と足を取られてしまうナコルル。
壁はまるで柔らかい泥の様にナコルルの体を沈め、引き込んでいく。
まるでナコルルを取り込もうとするが如く。
腕と膝、そして背中が泥に引き込まれ、完全に身動きが取れない状態のナコルル。
???「フフフ・・・ハハハ・・・よもや君がここまでやるとはな。」
ナコルル「そ・・その声は!?」
忘れようもない、先程まで戦っていた相手の声。
身動きの取れないナコルルの前に球状の物体が姿を現す。
例えるなら石で出来たバレーボールと言った所か。
ナコルル「あなたが・・・本体・・・!?」
球体「いかにも・・私が核であり、あの巨人は所詮泥の器。私が無事なら何の問題もない。」
ナコルル「くぅっ・・・!は、放しなさいっ!!」
抵抗するも拘束は捕らえたナコルルを放そうとはしない。
球体「君は私をここまで追い込んだ。大変名誉な事だ。
   君は他の者より1級程上の石像にしてやろう。感謝するが良い。」
ナコルル「いやっ・・・、駄目・・・力が・・・抜けていく・・・。」
ナコルルの力もまた、泥によって吸われていく。
そしてそれとは逆にナコルルの中に入ってこようとする力。
それはナコルルを石にしようとする力であった。
脱力感の中、必死にそれに耐えるナコルル。
ナコルル「くぅっ・・・う・・・ああっ・・・。」
腕と太股が乾いた音を立と共に石化する。
その石化はゆっくりとナコルルの体を染める様に広がっていく。
その美しいロングヘアも・・・、ふくよかな胸の膨らみも・・・。
ナコルルは尚も耐えながら、視線を目の前に向ける。
視界に入るのは目の前で横たわるリムルルの姿。
ナコルル「・・・ごめんなさい・・リム・・ルル・・・。」
石化がその美しい顔立ちを撫でる様に進んでいく。
・・・そしてナコルルもまた、深い眠りへと落ちていった・・・。
そしてその場に残ったのは壁に抱かれて眠る少女のレリーフが1つ。
それは壁に取り込まれ、完全に石化してしまったナコルルの姿だった。
目を閉じ、どこか悲しげなその表情。
それはまるで美しい彫像品の様だった。
球体「ハハハ・・・素晴らしい!!」
球体は石となったナコルルとリムルルを交互に見つめる。
何処の世界にもこの様な彫像品は無いだろう。
球体「ふむ・・・しかし予想外に体を使ってしまったな。」
あの泥はただの泥では無い。
魔力を込めて練った特別製の物だ。
あれだけの体を再構築するには備蓄分だけではとても足りない。
今までは使用分を補充するだけで充分だった。
しかし今回は違う、体を破壊されたのだ。
再構築するにはそれなりの時間がかかるだろう。
球体「だが・・・その作業もこれを見物しながらであれば退屈な物にはならない・・・か。
   フフフ・・・ハッハッハ!」
森に響く笑い声。
しかしその笑い声も飛んできた酒瓶の直撃で止む事となる。
突如飛来した空の酒徳利は放物線を描き、見事空中に漂う球体に直撃した。
球体「グハッ!な・・何だ、貴様は!?」
振り向くとそこにはざんばら髪の浪人が立っていた。
手には大きめの日本刀が握られている。
覇王丸「妙な気配を感じて来てみれば・・・まさか西瓜割りをするハメになるとはねェ。」
男は不敵な笑みを浮かべる。
球体「西瓜だと・・・我を愚弄するか貴様!!」
それには答えず、男は日本刀を構え直しこう言った。
覇王丸「何だか良くはわからねぇが・・・とりあえず嬢ちゃん達は返して貰うぜ?」
球体「クッ・・・!」
まずい。
この無礼者を排除したい所だが・・・攻撃手段が無い。
泥は先程の戦いで既に使い切ってしまった。
いわば丸裸の状態だ。
何とかこの場を切り抜けねば・・・。
今度は一転、ジリジリと後退を余儀なくされる球体。
しかし、その動作を攻撃の意志が無いと読むと、覇王丸は一気に距離を詰めた。
案の定逃げの体制に入る球体。
覇王丸「でぇりゃあああっっっ!!!」
気合い一閃、刀を振り下ろす。
球体を真芯に捉え、一刀両断する。
球体「ギャアアァッッーーーーーー!!!」
真っ二つに割れた球体は地面に落ち、消滅した。
それを見届けると、覇王丸は手にした刀を天に放り投げる。
覇王丸「そんなに石が好きなら、地獄で足の上にでも積んで貰うんだな。」
ニヤっと笑い、鞘で落ちてきた刀をキャッチする。
刀は見事に鞘へと収まっていた。
球体の消滅を受け、リムルルの石像が僅かに発光し始める。
その光の中で、灰色だった体に生気が戻り、元の色彩を取り戻し始める。
リムルル「あ・・・れ・・・?私・・・。」
ナコルルを拘束していた壁面も徐々に崩れ始める。
枠が消え、外れるナコルルの石像。
覇王丸「おっと!」
すんでの所でそれを受け止める覇王丸。
下は土だが・・・万が一って事もある。
そして覇王丸の腕の中で、美しき石像だったナコルルも元の姿へと戻っていく。
ナコルル「・・・あ・・・覇王・・丸・・・さん? 私・・・一体・・・。」
それを見て、やや厳しかった覇王丸の表情に安堵の笑みが浮かぶ。
覇王丸「これにて一見落着・・・だな。」
森の方でも石化が解けたのか人の話し声が聞こえ始めた。
静かだった森は、しばしの間喧噪に包まれる事となった・・・。
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